参加型プロモーションの現在
- #Case study
日本では緊急事態宣言解除からおよそ一ヶ月半が経過しますが、ここ最近は感染者数・陽性率ともに上昇を続けており、警戒を緩められない状況です。
VOL130でコロナ禍における新しいイベントの形をご紹介しましたが、色々な形が提示されていたように、
今まで通りのやり方で大人数がどこか一箇所に集まるのは難しいということが分かりました。
ではイベントではなくユーザーが参加することで成立する、参加型プロモーションは現在どのような形で行われているのでしょうか?
こんな時だからこそお互いに手を取り合って助け合う、ユーザーとブランドのコミュニケーションによって生まれるプロモーションの現在をご紹介します。
①マクドナルド(スウェーデン/飲食業)
タイトル:
Happy Meal Senior
内容:
シルバー向けハッピーセット
スウェーデンでは、 新型コロナウイルスの影響における規制は
緩和されつつありますが、大勢での食事はまだまだできまないそうです。
離れて暮らすおじいちゃんやおばあちゃんは孫たちに会えません。
逆もまたしかり。
そこでスウェーデンのマクドナルドが考えたコミュニケーションは、
おじいちゃんやおばあちゃん向けのハッピーセットを作るというものです。
このセットにおもちゃは付いてきません。
その代わり、もっと嬉しいものが付いてくるのです。
それは孫たちが描いた絵や手紙。
お絵かきスペースは、換気やソーシャルディスタンスを考えて
マクドナルドの店舗外に作られました。
ここで孫たちが描いた絵を、マクドナルドの商品とともに
おじいちゃんやおばあちゃんの家までデリバリーしてくれるのです。
これはおじいちゃんやおばあちゃんにとっては、
なによりの「おまけ」になりますね。
会いたい人と会えない寂しさ、そして距離を埋めてくれる、
心温まるプロモーションです。
②バーガーキング(パラグアイ/飲食業)
タイトル:
Burger King delivery area doodles
内容:
デリバリーエリアを知ってもらう方法
パラグアイでも新型コロナウイルスは蔓延し、
3月のおわりから約1ヶ月半の外出禁止となりました。
その期間はお客さんが店舗に来られないため、
バーガーキングはデリバリーサービスを実施することにしました。
ただし、いきなりデリバリーサービスを行おうとすると問題が出てきます。
店舗ごとのデリバリーエリアが、周知されていないためです。
そこでバーガーキングは、
各店舗のデリバリーエリアを使ったお絵かきコンテストを開催。
マップのエリアの形を使って、様々な絵を描いて投稿するのです。
実際に絵を描いてみて、どこがデリバリーエリアなのか?
自分の家がデリバリーエリアに入っているのか?
そんなことを楽しみながら知ってもらおうという、
バーガーキング素敵な目論見が見えます。
素晴らしい作品を作ってくれた人への賞品は、
もちろんバーガーキングのメニューだったようです。
しかもデリバリーで。
ユーザーの遊び心とバーガーキングの思惑が合致する、
描いて楽しい、知って得するプロモーションでした。
③MBRGI(UAE/慈善財団)
タイトル:
World’s Tallest Donation Box
内容:
世界一背の高い募金箱
新型コロナウイルスは世界中で猛威をふるっています。
もちろん中東でも。
罹患しなくても、経済的な影響で苦しんでいる人は多いです。
そこでMBRGIが考えたのは、寄付金を募って、
いただいたお金で困っている人に食事を贈ろうというもの。
そのためには、多くの人にその活動を知ってもらう必要があります。
現在世界で一番高いビルは、ドバイにあるブルジュ・ハリファです。
高さは828メートル。
このビルを使えば、絶対に目立ちますね。
このビルの外観を照らしているのは、120万個以上の電球です。
MBRGIは、その電球一個一個を寄付の数だけ光らせることにしました。
誰かが寄付をしてくれると、少しずつビルが明るくなっていくのです。
まだまだ暗い時には、自分も寄付をしてみようかと思いますね。
寄付はサイトから行えます。
サイトでは現在の寄付状況=ライトの点灯状況が
わかるようになっています。
そしてブルジュ・ハリファの照明が全て点灯した時、
120万人に食事が届けられたということになるのです。
持続的な支援ではないですが、
募金することでタワーと人々の生活に光を照らすという、ダブルミーニングが効いたプロモーションでした。
まとめ
今、コミュニケーションのあり方は広告でも変化してきています。
ポイントの一つは”離れていても生まれるコミュニケーション”です。
今回紹介した3例でも、距離による弊害はありません。
むしろコロナが蔓延する前だと、凡庸なプロモーションだった感すらあります。
ですがこの3例は、広告を作るのではなく、既にあるものの役割を置き換えることで、
プロモーションの効果を高めている点が秀逸です。
マクドナルド
広告ではなく、「新しいおまけ」を作る。
おもちゃを手紙に。
バーガーキング
広告ではなく、「お絵かきコンテスト」を作る。
地図をキャンバスに。
MBRGI
広告ではなく、「募金の仕組み」を作る。
ビルを募金箱に。
その時々のニーズや目的に合わせて、本来の役割を置き換えるという手法は、
優れたクリエイティブジャンプにおける常套手段です。
コミュニケーションのあり方が変化している昨今、様々なモノやコトの役割も変化しようとしています。
そして広告はプロモーションであると同時に、コミュニケーションだと私は考えています。
2019年には、ついにデジタル広告がテレビ広告費を抜きました。
(個人的には、未だに広告の王様はテレビだと思っている節があるので、少し寂しさは覚えますが…)
SNSが当たり前の存在になり、広告もまた一方通行なものから双方向なものへとシフトしているのです。
特にこの先は広告においても、ユーザーや社会とのコミュニケーションのあり方が、
より一層問われていく時代に突入していくのではないでしょうか。
コロナは良くも悪くも、時代を加速させているのです。