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企画の「き」VOL.3

  • #Case study

ハリウッド映画などが日本で公開される際、日本版のポスター広告が海外版と違うことに疑問を感じたことはありますでしょうか?
日本版と海外版のクリエイティブの大きな違いには、ポスターが担う「役割」の違いがあるようです。
今回は日本版と海外版を比較しながら根本の原因を皆さんと考えていきたいと思います。

海外と日本の映画ポスターのクリエイティブがなぜ違うのか?その要因とは?

では実際に具体例を見ながら考えていきましょう。

映画ポスターにおける日本版と海外版との比較

①『ファンタスティック・ビースト』
(Fantastic Beasts)

内容:
J・K・ローリング原作の映画「ハリー・ポッター」シリーズのスピンオフであり、「魔法ワールド」の映画シリーズ。

海外版:左画像
大きく壁が壊れた建物に男性がたたずみ、こちらに視線を向けています。ストーリー、ドラマを感じさせるクリエイティブです。

日本版:右画像
主人公と思しき男性が大きく中央に配置され、魔法の杖をふるビジュアルです。

②『ラ・ラ・ランド』 ( La La Land)

内容:
2016年に公開されたアメリカ合衆国のロマンティック・ミュージカル映画。
俳優志望とピアニストの恋愛を描いた映画で、脚本・監督はデミアン・チャゼル、主演はライアン・ゴズリングとエマ・ストーンが務めた。

海外版:左画像
極端にシンプルな構成。美しい背景をバックに踊る男女の姿があります。

 
日本版:右画像
かなり要素がもりだくさんな構成。映画タイトルよりも大きく「本年度アカデミー賞大本命!」の文字があります。

③『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』
( Birdman or (The Unexpected Virtue of Ignorance))

内容:
2015年度のアカデミー賞主要4部門(作品賞・監督賞・脚本賞・撮影賞)を受賞。
かつてスーパーヒーロー映画『バードマン』で大スターとなったものの、現在は仕事も家庭もうまくいかず失意の底にいる俳優リーガン・トムソンは、復活をかけたブロードウェイの舞台に挑むことに。

海外版:左画像
全体的にモノトーン。意味深に宙に浮く男性の姿。男性の配置は中央ではなく、やや右下という少し違和感のある配置に。

 
日本版:右画像
カラー写真。男性の後ろに映画の鍵となるバードマンが配置されたデザインです。

④『白鯨との闘い』
(In the Heart of the Sea)

内容:
ハーマン・メルヴィルの『白鯨』のネタ元としても知られる19世紀に起きた捕鯨船エセックス号を巡る悲劇の実話を、「アポロ13」のロン・ハワード監督が映画化。
白鯨との死闘の末に捕鯨船乗組員たちが辿る壮絶なサバイバルの行方を描く。

海外版:左画像
巨大な「目」と、それと比較されるような形で配置された小さな人間の姿。

 
日本版:右画像
なぜか遠くを見つめる男たち。タイトルも原題から大きく変更されています。
原題の「In the Heart of the Sea」を直訳すると「大海の奥深くで」「海の懐で」「海の中心部で」。
より深いニュアンスが込められているような気が‥。

まとめ

要因①
日本では「ポスター=広告」という考えですが、アメリカの場合は「ポスター=作品の一部」として考えられることが多い。
 
要因②
アメリカでは「ポスターを買う」という文化が根付いている。それも希少価値の高いオリジナルポスターを大人のコレクターが集めるだけではなくて、小さい頃から、部屋に映画ポスターを貼るのが一般的。観賞、装飾用としてのポスターの存在がある。
 
要因③
買う人が多いため、制作側も気合いと予算をかけてつくる。
制作にかける予算・時間が大きければクオリティーも必然と高くなる。
 
単に、日本人がクリエイティブな感性やセンスが劣っているということではなく、ポスターが担う役割が違う、そもそも制作される文化的な背景が違う。ということでした。

Planner / Marketer

TAKEI Shota

武井 祥太

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