広告らしくない広告について、考える
- #Case study
メタバース・デジタルツイン・MR/XRとか?
テック系コンテンツに広告が参入してくるっていうのは、そこかしこで噂になっていますね。
でも今回取り上げるのは、もっと本質的な話です。
そもそも、皆さまは広告好きですか?
TVを観ているとき、CM中はスマホ触っちゃったりしてませんか?
YouTube観ようとしたとき、早押しボタンみたいに広告スキップしてませんか?
正直、僕はスマホ触っちゃうし、スキップ押しちゃいます。
仕事柄参考に観ることはあるので、一般的な視聴者に比べるとちゃんと広告に向き合っている方だと思います。
これが一般的な視聴者だと、それはもう興味なんてないに等しいわけです。
そして広告は、そんな人々を振り向かせなければいけない。
なんとも大変な話ですが、ここまで興味持たれてないしすぐスキップしたい邪魔な存在って、もはや嫌われ者ですよね。
でも、自画自賛ばっかりするような広告が増えている現状に、視聴者が辟易するのも無理はないと思うんです。
自分の自慢話ばかりする人ってうんざりするじゃないですか?それと一緒です。
じゃあどうすればいいんだろうか?と色々考えて、「広告なんだけど広告じゃない」
素敵な広告をかき集めてきましたので、皆様にご紹介したいと思います。
①IBM(フランス/テック)
タイトル : Smarter City
内容 : 街と人々がよろこぶ機能を持つ広告
だいぶ古い事例ですし、ご存じの方も多いと思いますが今一度。
「Smarter Planet(地球を賢く、よりスマートに)」というビジョンを掲げるIBMが、2013年にパリで行ったOOH。
広告のプロジェクト名は、「People For Smarter Cities」。
目を引く広告をきっかけに、自分の住む街をより良くしようとする人々を増やしていこうというプロジェクトです。
このOOHのポイントは、広告が自ら人々の生活に関わっていくということ。
折り曲げてベンチにしたり、屋根にしたり、スロープにしたりと、少しの工夫で街を豊かにできることを伝えています。
それも、その関わり方は邪魔にならず、むしろ役に立つ、人々が喜ぶ関わり方です。
②ドミノ・ピザ(USA/ファストフード)
タイトル : Paving for Pizza City
内容 : ピザのために、道路を補修する
こちらはドミノ・ピザがアメリカで実施したキャンペーン。
どんな施策かというと、ドライバーが安全にピザを配達出来るよう、全米の道路の開いた穴やひび割れを、ドミノ・ピザが自費で舗装するというもの。
舗装した道路には、ドミノ・ピザのロゴとともに「OH YES WE DID(やってやったぜ)」というメッセージがステンシルされています。
こちらもIBMと同じように、邪魔してませんし、社会の人々の役に立ってます。
凸凹道って危ないですから、ピザを持ち帰るときに限らずない方がいいですからね。
③日清(日本/食品)
タイトル : 書き置き City
内容 : 「どんばれ屋」閉店の本音
こちらは、かつて山手線渋谷駅のホームにあった、日清食品のカップ麺「どん兵衛」がその場で食べられる飲食店「どんばれ屋」が展開した「置き手紙」。
2016年7月31日をもって閉店したのですが、閉店後に店内の窓際にひっそりと残されていた「書き置き」が、店側の本音が漏れているとTwitterで話題になりました。
これを広告と呼ぶのかどうなのかは定かではないですが、PRになっているということで僕の中では非常に高度な広告です。
それも、このPRにかけられた予算は、「書き置きとヤカン」のみ。
日清さんは、ユーザー心のくすぐり方が本当に上手すぎます。
IBMやドミノ・ピザと違い、社会の役には立ちませんが、クスッと笑えるじゃないですか。
でも、それでいいんだと思います。
むしろそれくらいが心地いいのかもしれません。
まとめ
IBMはOOHなので、「広告らしくない広告」というには若干無理があったかもしれませんが、本当に秀逸すぎる事例なので今回無理矢理入れました。
ちなみに、ドミノやどんばれ屋のような、広告以外の方法でブランドの認知度を上げ、顧客に何らかの行動を起こさせるための一連の活動を「ブランドアクティベーション」と呼びます。
全米広告主協会によると、アメリカの企業はマーケティング予算のうち、約60%をブランドアクティベーションに投じているそう。
さて、広告の未来についてですが、SNSをみんな当たり前にやっている、いわゆるデジタル以前・デジタル以降で考えてみます。
デジタル以前
拡散→気づく
デジタル以降
見つける→拡散する
デジタル以前、いわゆるマス広告が主流の時代は、TVなどメディアであらかじめ拡散された広告に、消費者が気づくという仕組みだったと思います。
THE・広告な仕組みですね。
誰が見ても広告とわかる形です。
対してデジタル以降はというと、今日挙げたような拡散されていないものを見つけた消費者が、SNSで拡散するという仕組みになります。
これ、どのタイミングで広告と気づくのかは定かではありません。
でも広告がここまで嫌われ者な世の中にあるのなら、むしろ広告と気づかれないまま話題になってくれたほうが成功だと思うのです。
これは、本日紹介したブランドアクティベーションに限りません。
レッドブルのように、スケーターとかラッパーのスポンサードをして、カルチャーをフックアップするサポートをしたりとかでも、ブランドイメージは向上させることができます。
むしろ、下手にCMをつくるよりも効果的だとさえ思えます。
これからの広告=人々が喜ぶもの。
喜ぶから、賛同する、欲しくなる、利用したくなる。
そして、今までの広告らしさを脱ぎ捨てて、人々の邪魔はしない。
好きになれないものに、関心を持とうとは思わないですよね。
ソーシャルグッドとか、パーパスとかそういうことじゃなくて、本質的なことです。
消費者という「人」を相手にしているのだから、その「人」が面白いと思い、喜び、感動できるような広告をつくっていかなければならないと思うのです。