破壊のプロモーション
- #Case study
砂場で夢中になって何かを作っていた子供が、完成した途端急に壊し始めるのは、破壊に伴うエクスタシーに酔いしれているのではないかと岡田は勝手に妄想しています。
本日はそんな「破壊」にフォーカスして事例を紹介していきたいと思います。
①Anadolu Sigorta(トルコ/保険)
タイトル:Hadooken Attack !
内容:トルコの自動車保険会社によるCM。
一見インタビューベースの一般的なCMと思いきや、途中から急展開が繰り広げられます。
レポーターの女性が、レストランの前で男性にインタビューしています。
女性:「車の保険には入っていますか?」
男性:「保険?そんなもの必要ないよ。」
女性:「でも万が一の場合もあるでしょう?」
男性:「万が一って言っても、道を歩いていて、花瓶が頭の上に落ちてくるくらいの確率だろ?」
「心配なんてすることないよ!僕の車に一体何が起こるっていうんだい?」
男性は保険の必要性を全く感じていない様子。
すると突然、「波動拳!」という掛け声とともに登場したのは、人気ゲーム「ストリートファイター」のメインキャラクター、「リュウ」。
②SAMSUNG(USA/デジタル機器)
タイトル:Spider
この新端末のディスプレイが驚愕するほど綺麗で、大きいことを伝えることが目的。
現実の色味、色合いを忠実に再現しすぎるディスプレイであったために、持ち主の男性にとって悲惨なことがおこってしまうというストーリー。
難しく考えさせず、長々と機能の説明もしていないのに、商品の機能について簡単に理解できてしまうユニークなCMです。
③WENDY'S(USA/飲食店)
タイトル:KEEPING FORTNITE FRESH
内容:欧米で圧倒的な人気を誇り、全世界で2憶人以上がプレイしているバトルロイヤル・ゲーム『フォートナイト』。
小さな島に100人のプレーヤーが集い、生き残りをかけて戦うこのゲームでは、期間限定モードとして各種ブランドや映画などとコラボしたイベントが不定期で開催されます。
昨年の『フードファイト』では、ハンバーガーとピザをテーマに2つのチームに分かれた攻防戦が繰り広げられましたが、このイベントに便乗してプロモーションを行ったのが米ハンバーガーチェーンのWendy’s。
フォートナイトで『スキン』と呼ばれるコスチュームを自由に変える機能を使って、同社のマスコットキャラクターの女の子を再現し、フードファイトに参戦することにしました。
ところがこのアバター、バーガーチームに所属するのかと思いきや、『Durrr Burger(=バーガーチームの名前)は冷凍庫だらけ。ウェンディーズは絶対に冷凍肉は使わない』と、ピザチームの一員としてバーガー相手に戦うとTwitter上で宣戦布告したのです。
実際のプレイはというと、敵と戦うわけでも相手の陣地に攻め込むわけでもなく、Durrr Burgerの冷凍庫を9時間にわたってひたすら破壊。
そしてその様子をTwichでライブ配信したところ、『Wendy’sのキャラクターが、ゲーム内のハンバーガーショップ相手に大暴れする』というシュールな光景が瞬く間にプレーヤーたちの間で話題に。
一緒になって冷凍庫を壊しまくるプレーヤーが続出するほどの盛り上がりを見せました。
数百万人のフォロワーを持つインフルエンサーがメンションしたり、Twitchでもハイライトシーンに採用されるなど、多くのユーザーにリーチすることに成功した本施策は、カンヌ・ライオンズ2019のSOCIAL & INFLUENCER部門でグランプリを獲得しています。
まとめ
しかし、「破壊」という要素を「何か」と組み合わせることで、プロモーションは爆発的なエネルギーを発揮し、ユーザーの脳裏に焼き付けることが可能なのではないかと私は考えています。
「破壊」の暴力的な側面を利用しつつ、ユーザーにネガティブな印象を与えない。
「破壊」という行為にユーザーが納得できる意味を与える。
「破壊」をいかにしてクリエイティブに落とし込むか。
これらの課題をクリアすることができれば、「破壊」はあなたにとって強力な武器となるかもしれません。