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ストーリーの描き方を考えよう

  • #Case study

【ブランデッドコンテンツ特集 Vol.07】

企業とブランドについて、様々な観点から考察していくブランデッドコンテンツ特集の第7回目。

J-LODが補助金による支援を行っているブランデッドコンテンツ。



①主としてデジタル配信を行う映像の制作であること

②ブランディングを目的として、事業者の姿勢や理念に対する共感を呼ぶ  ストーリー性のある映像を新たに制作する事業であること

③完成した映像を発信し、その効果を測定すること



支援の対象となる映像は上述した三つの要件を満たす必要があります。

ではこの中の②、ストーリー性のある映像ってなんでしょうか?

普通に考えてみるとドラマですよね。

いわゆるTVドラマや映画のような、脚本があってその脚本に基づいて役者が演技するあれです。

ただ、ここで一つ疑問が沸いてしまいます。

映画やドラマは予算が桁違いです。

出演者も有名です。

そして広告ではなく一つの作品として作られています。



※ なお、「ストーリー性のある映像」とは、事業者の姿勢や理念に基づいた、エンターテイメント性を有するブランディング映像であり、視聴者の興味をかき立て、コンテンツとしての共感を呼び起こすものを想定しています。

ちなみに②の注釈としてこのような解説が書かれていますが、この文中にあるエンターテイメント性を、

一般的なドラマかつ、無名の役者で描いた時に、視聴者の興味をかき立てることは難しいのではないかと思ってしまうのが本音です。

少なくとも僕が視聴者だった場合、そのようなドラマは見たくありません。



そこで今回は、ブランデッドコンテンツを制作する上で鍵になる、ストーリーの描き方について考えていきたいと思います。

①Play-Doh(フランス/玩具)

タイトル:
The Play-Doh Masterpiece

内容:
もっとも美しいアート作品

 

 


小麦粘土として世界75カ国で愛用されている粘土ブランド・Play-Dohが、2021年で65周年を迎えたことを記念して、パリ市立近代美術館とのパートナーシップを発表。

これを記念し、Play-Dohが考える「最も美しいアート作品は、わたしたちが一緒に創り出すものであることを伝えたい」という想いを象徴するキャンペーンを実施し、無名の父娘がPlay-Dohで制作した作品を他の著名なアーティストの作品と同じように美術館内に展示しました。

 


この映像が一般的なドラマと異なる点は、「父娘が楽しみながら作った」というファクトがストーリーに反映されている点です。

さらには、父娘が作った作品が実際に美術館で展示されることで、「最も美しいアート作品は、わたしたちが一緒に創り出すもの」というコンセプトが他の作品との対比により炙り出されています。

 


映像の最後、無事飾られた作品の横には

「Les plus belles oeuvres d’art sont celles que l’on crée à deux.」

(最も美しいアート作品は、2人で創りだしたもの)

というメッセージが添えられています。

企業の想いをファクトと繋げながらストーリーを描いており、視聴者も共感しやすい内容になっているのではないでしょうか。

②Dove(UK/パーソナルケア)

タイトル:
「Reverse Selfie」

内容:
ありのままの美しさ

 

 


パーソナルケアブランドのDoveが今回打ち出したのは、ありのままの自身の美しさを大切にしてほしいというメッセージです。

そのようなブランドメッセージを伝えるため、キーアイテムとして画像加工アプリが用いられています。

そして映像のキー表現は、逆再生。

この二つの鍵により、「ありのままの自分を大切にしよう」というメッセージが際立ちます。

 


近年の画像加工アプリの進歩って恐ろしいですよね。

プリクラの加工っぷりも中々すごいですが、画像加工アプリの加工っぷりは映像をご覧の通り、もはや整形というレベルまで進んでおり、さらにユーザーがコントロールして自分の理想の顔に近づけることができてしまいます。

映像冒頭、完璧に加工された写真から逆再生されていくわけですが、ここで同時に描かれるユーザーのコメントとLIKEボタンがまた恐ろしいのです。

画像加工アプリは、自分の理想の顔に近づけることができるツールです。

 


ですが、冒頭の他ユーザーのコメントが描かれることにより、画像を加工することが「自分にとっての理想なのか」「誰か他の人にとっての理想なのか」、自分のためなのか他人のためなのか、その境界を曖昧にしてしまうのです。

この曖昧さは、現代人が抱える重要なファクトとして捉えることができます。

キーアイテム・キー表現、二つの鍵を使いこなしてストーリーを描き、メッセージを効果的にユーザーへ伝えながら共感を作ることに成功している映像だと思います。

 

 

余談ですが、最近画像加工アプリを使いこなしているおじさんが話題になっていましたね。

 


こちらを見ている女性は加工後のおじさんで、本人は後ろ向きで自撮りをしている50代妻子持ちの男性です。

こちらの写真をSNSにアップしたところ、海外からナンパが来まくりだとか。

ほんとに男ってバk…というか、画像加工アプリって怖いですよね。

皆様もありのままの自分を大切にしましょう。

③HONDA(カナダ/自動車)

タイトル:
Full Circle

内容:
一冊のストーリー

 

 


HONADAが北米市場で展開している新型シビックの発売を訴求するCM。

この映像の鍵になる要素の一つは、ファクトです。

カナダで展開されたこちらの映像ですが、カナダでの自動車販売台数はなんと17年間、シビックがトップなんだそう。

そこで考えられたコンセプトが、「長きにわたり愛されている」ということ。

 


このファクトをコンセプトに、一人の男性の生涯を一冊の本の中に収め、パラパラ漫画風に表現しています。

そして一人の男性の生涯が描き終わり、新型シビックに乗って男性が車で走り出すと、最後のページにはコピーが書き記されています。

「The more things change, the more things stay the same.」

(変われば変わるほど、そこには変わらないものがある。)

 


一人の男性の生涯に、長きにわたり愛されているシビックが寄り添っている。

そんなストーリーが、一冊の本(シビックのオーナーズマニュアル)に納められていた、というオチも好感が持てます。

まとめ

ストーリーの描き方を考える、と題してお送りした今回の広告勉強会。

ご紹介した事例はいわゆるTVドラマのような一般的なドラマではありません。

さらに有名なキャストが出演していないにも関わらず、興味をかき立て、共感を呼び起こすものになっています。

ちなみに低予算かつ無名キャストで作られたドラマでも、素晴らしい作品はたくさんあります。(「カメラを止めるな!」や「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」など)

ですが、これらの作品は今回ご紹介した事例のように、演出や撮影技法にギミックがあります。

このギミックがドラマに良い意味での「異質さ」を与え、他のものとは異なるオリジナリティを生み出して、だからこそ視聴者の興味を掻き立てるのです。

そして今回ご紹介した事例全てに共通しているのが、ファクトです。

つまり単なる作り物ではなく、ファクトがストーリーに込められているかどうかが、視聴者の興味をかき立て、共感を呼ぶ重要な要素になるのではないかと私は考えます。

さらに付け加えるならば、このファクトは多くの人に当てはまるものである必要はありません。

ポン・ジュノ監督が、「パラサイト」でアカデミー作品賞を受賞した際、こんな言葉を残しています。

「私が若かりし頃、映画を勉強していた時に深く心に刻まれた言葉がありました。それは「最も個人的なことが最もクリエイティブなこと」です。」

「これは、私たちの偉大なマーティン・スコセッシの言葉です。」

この言葉の意味は、自分が感じたこと・自分が経験した個人的な出来事こそが、オリジナリティを生み出す源になるということ。

みんなが経験している価値観は、ありきたりになってしまいます。

つまり、「みんなに刺さるように」は「誰にも刺さらない」のです。

誰しもが、個人的な出来事や想いを抱えて生きています。

そんなあなたの個人的なことをブランデッドコンテンツに反映させることができれば、きっと誰かの共感を呼ぶはずです。

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