広告業界とデジタルツイン
- #Case study
「デジタル空間上の双子」という意味で、現実の世界にある物理的な「モノ」から収集した様々なデータを、
デジタル空間上にコピーし再現する技術のことを言います。
今回はデジタルツインと広告業界に関係が深そうな実用化事例を紹介していきたいと思います。

画像出典:https://www.hitachi.co.jp/products/it/IoTM2M/list/iotcompas/
デジタルツインとシミュレーションは何が違うのか?
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シミュレーション(simulation):現実に実験を行うことが難しい物事について、想定する場面を再現したモデルを用いて分析すること
※出典:実用日本語表現辞典
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デジタルツインは、このシミュレーションを行うためのひとつの技術であると言うことができますが、従来のシミュレーションの大きな違いは
①リアルタイム性
②現実世界との連動 の2点です。
メタバースのような仮想世界にしか存在しないモノや空間、または作成前の建築物や製品、現存しないものや架空の3Dデータではなく、リアルの世界に存在しているものの再現という点がポイントです。
①Project PLATEAU (プロジェクト プラトー)
内容:
PLATEAU は、国土交通省が進める 3D都市モデル整備・活用・オープンデータ化のリーディングプロジェクトです。
都市活動のプラットフォームデータとして 3D都市モデルを整備し、そのユースケースを創出します。
さらにこれをオープンデータとして公開することで、誰もが自由に都市のデータを引き出し、活用できるようになりました。
https://www.mlit.go.jp/plateau/about/
国土交通省が2020年度からスタートしたプロジェクトですが、2021年8月には、全国56都市の3D都市モデルのオープンデータ化が完了しています。
オープンデータゆえにさまざまな取り組みや実証実験にデータが活用されています。
■工事車両の交通シミュレーション
■物流ドローンのフライトシミュレーション
■バーチャル都市空間における「まちあるき・購買体験」
■人流・空間・気象・自然災害などのデータによって被害予測モデルの構築
出典:https://www.mlit.go.jp/plateau/new-service/
「誰でも使用できる街の3Dデータ」を活用すればさまざまなコンテンツやアプリケーションの開発が今後盛んになってくることでしょう。デジタルツイン事業以外でも実写映像と3Dデータの合成など映像制作会社でも使える用途はたくさんありそうそうです。
以下のコンセプトムービー内でも都市の3Dデータが活用され、クオリティの高い映像となっています。
PLATEAU Concept Film
https://youtu.be/RnJldic_IR8/
②サイバーエージェント 著名人500人分のデジタルツインの制作・キャスティングを目指す
内容:
サイバーエージェントは8月2日、タレントなど著名人の「分身」をキャスティングするサービスを開始しました。
内容:
過去の広告勉強会で「デジタルヒューマン」にフォーカスしましたが、
今回は実際の人物の「分身」をデジタルの世界で運用していくような試みです。
全身の3DCGデータ、動き方の特徴などをとらえたモーションデータ、音声データなどを取得し、デジタル化した分身(デジタルツイン)を制作し、広告やオンライン上のエンターテインメント、接客などにキャスティングしていく模様です。
1人めのデジタルツインは、世界で活躍するモデルの冨永愛さん。
DigitalTwinLabel – Ai Tominaga /Cyberagent
サーバーエージェントは2023年をめどに著名人500人分のデジタルツインの制作・キャスティングを目指しています。
そのほかにも、中国国営通信社の新華社は「AIアナウンサー」を2020年5月に発表するなど新たな動きがあります。
まとめ
現実世界とのリアルタイム連動によって、
・無駄の改善(時間、場所、人材)
・効率的な資源の活用と循環
・大規模で複雑なタスクを実現可能
広告業界では
・精度の高いターゲティング
・媒体の進化(屋外広告のAR化)
など様々な変化が期待できそうです。
個人や一企業単体の動きではなく、日本または世界全体がチームとなって推し進める動きが今後活発になってゆけば、より加速度的に日常がアップデートされていくと思います。
国土交通省が推し進めるムーショット目標が実現可能な世界へと一歩近づいたように感じました。